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□はじめに
□館山市が抱える大きな課題
〇 財政面からの課題
〇 まちづくり面からの課題
〇 教育面(三中建設)からの課題
□市議会としての取り組み
□おわりに |
はじめに
3月には小・中学校の卒業式と幼稚園の卒園式があり、4月にはそれぞれの入学式、入園式があります。市議会議長の立場でこれらの式に参列しておりますが、子供たちの成長の速さに驚くとともに、卒業式での感動を参列された父兄の皆さんと共有しております。
子供たちの光り輝く瞳をみて、これからの健やかな成長を願ってやみません。子供たちは家族の、地域の、さらには日本の宝です。家族だけだけではなく地域を挙げて無事な成長を手助けしたいと思っています。
そのような意味で区長さんをはじめとする地域の皆さんが、子供たちの登下校の際に、雨の日も風の日も交通事故等のないよう見守り活動をされておられるお姿に、感謝を申し上げますとともに敬意を表するしだいです。
さて、私が市議会議長になって5月で3年になりますが、今回の定例市議会を見ていますと、市議会が大きく変わろうとしていることを実感しています。それは、平成27年4月1日に施行された館山市議会基本条例と、平成29年4月1日に施行された館山市議会議員政治倫理条例の制定が大きく影響していると思っています。
条例制定によって理念的なものを含めて議会・議員として実施すべき事項が明確になり、全議員がこれらの条例を規範として活動するようになっているからです。特に市民の皆様と議会が意見交換する議会報告会をはじめ、常任委員会が担当する部署に関連したテーマで関係団体と意見交換する等、私が議員になった時から比べると雲泥の差です。
今までそれぞれの議員が個々に活動してきたわけですが、個々の議員活動には限界があり、議会としての意見や提言が必要です。地方自治法では、議員個人には自治体行政に対する調査権を与えておりませんが、議会には調査権が与えられています。
したがって、山積する課題に対して議会として調査し、調査結果を議員間で議論して提言する必要があります。そのような活動を平素から実施するために、個々の議員には問題が認識できる勉強と見識が求められていると思っています。
さて今回の市政報告は、平成30年度の予算は成立しましたが、館山市が抱える課題は山積しており、それらの課題を市民の皆様にご認識いただくことと、市議会として今後どのような取り組みをすべきなのか、考えていることをお話ししたいと思います。
館山市が抱える大きな課題
館山市が抱える大きな課題として次の3つを考えています。
それは「財政面からの課題」、「まちづくり面からの課題」、「教育面(三中建設)からの課題」です。
これらの3つの課題は、何れもそれぞれが関連するものであり、同時並行して取り組む必要があります。
ところで館山市の市政運営は、第4次総合計画(平成28年~37年)で示されており、平成30年度は、前期基本計画(5年)の3年目として位置づけられています。
総合計画では、将来都市像として「笑顔あふれる自然豊かな『あったかふるさと』館山」を掲げ、4つのまちづくりの手法、4つの重視する視点、7つの基本目標を掲げています。
さらに基本目標には、具体的な取り組みが示されており、これらの取り組みが施策、事業として予算に反映されるわけです。
したがって私たちは、これらの具体的な取り組みが着実に実行されているかをチェックする必要があるわけですが、私が考えている館山市が抱える大きな課題は、これらの基本計画とは別の問題であり、別途取り組みを具現化する必要があるわけで、以下それらについてお話ししたいと思います。
〇財政面からの課題
房日新聞の1面記事に「館山、5年後の赤字転落回避へ」の見出しで、館山市が第3次行財政改革方針
(2018年度~2022年度)の実行で、単年度4億円の財政効果を生み出すとの記事があったのを記憶されている方もおられると思います。つまり、このままでは財政運営は2022年度には赤字に転落することが確実なことから、第3次行財政改革方針を明確にして措置しようとしているわけです。
私は、館山市が抱える課題のうち最優先で克服しなければならないのは、この財政面の課題であると思っています。それは平成の合併をしなかった館山市が、国の合併による恩恵を受けられず地方交付税の減額に伴って、平成20年には財政調整基金が枯渇してしまい、庁舎建設基金の流用によって凌いだ時期があったことを記憶しているからです。
館山市はこの財政危機を克服するため、民間人による行財政改革委員会を平成18年に設置して提言をいただき、大改革を実行しました。その主なものが人件費の削減(職員の定員削減)でした。
人件費の削減は具体的にかつ明確に実行できるもので、市議会もこの動きに呼応して、当時25名だった議員定数を次回の選挙から20名に減らし、その次の選挙ではさらに18名として現在に至っており、議員7名の削減は、年間約4000万円の人件費の削減になっています。ちなみに18名の議員体制は、全国的に見ても5万人以下の市の平均的なものであり、議員報酬面でも5万人以下の市の平均的な位置になっています。
この職員数の削減による弊害からか、館山市では課税の誤りをはじめ事務処理の齟齬がこのところ散見されることは、残念なことではあります。
さて、第3次行財政行革方針が打ち出されましたが、これで財政の立て直しができるのかという疑問を私は少なからず持っています。それは、方針に示された改革に具体性が乏しいことです。具体的に示されたものは、公共施設の見直しで20%の削減を目指しているということだけです。
行財政改革の基本は「歳入を増やし、歳出を減らす」ことにありますが、歳入の増加は一朝一夕にできるものではなく、大きな企業等の誘致が実現しない今では、観光をはじめとする市内の企業に頑張っていただいて、少しでも税収を増やすこと以外に方策はありません。
一方歳出については、取り組めることは沢山あるのではないかと思います。しかし、歳出削減は、市民サービスの現状からの低下を意味します。つまり、歳出を削減しようとすることは、市民の皆様に痛みをお願いすることにも通じるのです。
したがって行財政改革は、首長が腹を決めて市民に窮状を訴え、行政サービスが低下する部分を地域の力(住民の力)で補っていただくよう説得することが肝要です。
国・県の補助がある事業を積極的に取り込んで、計画する事業の実現に取り組むのは勿論ですが、アンテナを高くして国のモデル事業でも誘致するほどの取り組みが必要です。
議会としても行財政改革は喫緊の課題と認識しており、議員個々の調査研究はもとより議員間討議等を活用して、議会としての提言・提案を実施して行きたいと思っています。
過去に私がペットボトル処理問題を調査して追及した結果、ごみの再資源化事業は随意契約から競争入札になり、年間約3000万円の減額になった実績もありますので、しっかりと取り組んで行くつもりです。
〇まちづくり面からの課題
少子高齢化、人口減少問題は避けて通れません。行財政改革方針に示された館山市の人口推計によりますと、20年後には総人口が約38000人となると見込まれており、現在よりも1万人も少ない人口になります。さらに
市税収入は現状よりも落ち込み、社会保障の関連費は増額します。しかしながら総合計画では、これら人口減少をはじめとする将来を見据えたまちづくりについては、明確にされていません。
20年後には、現在の人口よりも10,000人も少ない約38,000人の人口になることを考慮すれば、現在のまちの形態が存続することは考えられません。行財政改革では公共施設の見直しが行われますが、目先の財政削減にとらわれることなく将来の人口減少の実態も考慮して、長期的な見通しをもって取り組んでいただきたいと思っています。
特に広域(安房郡市広域市町村圏事務組合)で実施している事業についても、長期的な視野に立って検討する必要があると思っています。広域の予算は年間(28年度)約34億円ありますが、そのうちの約8割(27.5億円)が構成市町の負担金で賄われています。
広域の事業の内、最も大きいのが消防費(約28.4億円)ですが、現在は老朽化した支所等の改修や建て替えの事業があり、これが終われば若干減少するものと思われます。
消防の事業は、住民の安全安心に繋がるもので簡単に削減とはいきませんが、安房郡市の人口13万人の時から将来は10万人になることを考慮すれば、現状の組織、態勢を維持していくことは困難であり、これらについても長期的視野に立って調査研究する必要があるものと思っております。
私も広域の議員の一人でもありますので、これらのことについてはしっかりと提言していくつもりです。
□教育面(三中建設)からの課題
今回の定例市議会の一般質問や予算審査でも、何名かの議員が第3中学校の建設に関して質問しました。
それは、執行部は有利な財源を確保して建設すると言っておりますが、その財源の見通しが立っていないのに基本設計の予算3,000万円を計上したことに対する疑問です。
仮に有利な財源が確保できなかった場合、建設しないのであれば基本設計が無駄になることはないのか等の質問がなされましたが、「有利な財源の確保に努める。」の回答しか得られませんでした。
ここでさらに大きな問題が提起されました。それは、私も常々考えていたことですが、3中の耐震化が急務であるならば、耐震性のない学校で授業を継続していることに問題がないかということです。
もう一つは、先の人口減少問題とも関連しますが、20年後の館山の中学生数が約700人と推計されており、現在の4つの中学校をそのまま継続することが、果たして将来的に良いことなのか。この際中学校の再編も考える必要があるとの指摘です。
私は、1中、2中の空き教室を考慮すれば、3中の生徒は耐震化された1中と2中に分散し、現在の3中は取り壊して将来の市役所の建設予定地として確保する。
将来の市役所は、この3中跡地に民間の力を活用した大型スーパーや賃貸マンションとの併設により、建設費を確保するということも考えてはどうかと思っています。
館山市の財政や中学校の現状と将来を考慮すれば、検討に値するものと思っています。
市議会としての取り組み
館山市が抱える大きな課題として、私なりに考えていることをお話ししましたが、今後議会としてこれらの課題をどのように取り組むのか、執行部にまかせっきりではなく議員同士の熱心な議論の結果を基に、提言・提案が必要であります。
そこで、私が最優先に克服しなければならない課題として挙げた財政面の課題に関して、第3次行財政改革方針を議会全体で勉強し、議論を重ねて提言できるようにしたいと思っております。
議会からも行財政改革委員会に2名の議員を派出するようになっておりますが、館山市が抱える重大な問題を議員各位が共有することは、議会の機能を発揮させるうえで極めて重要なことですし、しっかりと議論して提言するつもりです。
おわりに
1月30日に行われた千葉県市議会議長会の研修会で、早稲田大学の名誉教授で元三重県知事の北川正恭氏の「地方創生時代の議会のあり方」と題した講演を拝聴しました。
内容が議員活動を続けるうえで極めて参考になることから、館山市議会の全議員に読んでいただくよう、私なりにまとめた講演の要旨を配布したところです。
特に感銘を受けたのは以下の内容です。
現在、国は地方創生を掲げているが、国が一律に決めて地方創生とはないだろう。地方創生は地方の自立がなければ意味がないし、執行部よりむしろ議会が地方創生の主導権を取るべきである。
それは、議会は合議制であり民意を反映しやすく、議員同士の議論の結果によって政策、施策、事業を提言できるからである。そのようなことが実行できるかどうかで、地方創生の成否が決まる。
したがってこのような議会にするために議長の強いリーダーシップが求められており、議長の高い見識と実行力が不可欠であることから、不断の努力を期待するものである。
私が議長を拝命してまもなく3年になりますが、議長として後ろ指をさされることのないよう、上述した北川先生の薫陶にも応えれるよう職責を全うするつもりです。
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